「がんを生きる子 ある家族と小児がんの終わりなき闘い」という本を読んだ。
- 作者: 松永正訓
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/11/22
- メディア: 単行本
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これまで意図して公的機関の情報を中心にあたり、特定の個人の意図が入り込む余地の少ない情報を選んでいたのだけれども、ひょんなことからこの本の存在を知り、かつ医師である著者による、自身の立場と治療を受けた当事者からの聞き取りをもとにしたノンフィクション作品ということで、手に取って読んでみることにした。
心理描写が見事なまでに自分たちの経験と重なり、自分たちだけ取り残されているのではないと強く勇気をもらえる内容だった。ああ、そう、そうなんだよ。と。誰も理解してもらえない感情の理解者を見つけたという感覚。
これを読みながら、自分たちに降りかかった突然の悪性リンパ腫という病気と、その時に感じていたことを思い返していた。
以下はこの本に関する記述がメインはなく、この本を触媒とした自分たちの過去の記録です。
確定診断まで
- 異変が見つかってから病院をいくつか回る。ほぼがんだろうと間違いないとの見立てで生検をやった。
- その生検で全身麻酔のついでに中心静脈カテーテルを入れるとの医師の説明。
- 自分自身、過去にクローン病で入院治療をした際に中心静脈カテーテルを入れたことがあったから、それが長期入院と治療のための準備であること=つまり「がんでないということはもうない」ということがその時点でわかった。
- がんの原因は遺伝子のエラー。本でも触れられるその説明のくだりは自分たちのときと一緒だった。
- 予後に関しては確率がいくつであれ、その子にとってはゼロか100のどちらかだから、それに関して考えることに意味はないとの説明。説明は淡々と、しかし誠実だった。
- 本人にも伝える。
- 医師からは「理解はできているようだ」と。
- が、後に理解が若干微妙だったことを知る(笑)。
初めて聞く病名と不安
- 治癒の確率は自分たちが描いていた「がん」のイメージと比べると悪くないが、それでも悪いほうに転ぶ可能性もけして低くない。どうしても悪い方に考える。
- テレビドラマとかで出てくる壮絶な闘病のイメージが目に浮かぶ。
- はじめから負ける戦いなのでは?
- だとしたら、彼は何の為にうまれてきたのか?
- 世界中には星の数ほど人がいるのに、何故うちが?
- 自分だって相当低い確率の難病に罹ったけど、なぜ同じ家庭で2人も?
いろいろぐるぐる考えて
- わかんないことを考えても仕方ないから、とにかく頑張ろう
- 自分がそうだったように、いつかこの経験を活かして生きることができるようになる
- やっと覚悟を持って前を向く。
信じること
- そこから全てが始まる。
- 将来のことも、治療にあたる医師やスタッフのことも。
- 後者については病気の説明を受けるなかで信頼に足る人たちだと理解できた。
- 初めて入った病室。
- 周りには髪の毛のない子どもたち。
- が、陰鬱かというとむしろ逆で、笑顔混じりの生活感たっぷりの病棟。(もちろんカーテンで仕切られているが)
- みんな治ると信じて普通に暮らしている、小さなコミュニティ。
治療が始まってから
- とくに自覚症状がなかったこともあり、傍目には元気な中学生だった息子が、抗がん剤の投与によりどんどん消耗していく。
- 目がうつろで嘔吐を繰り返す姿を見ると辛い。
- この本に書いてあった「抗がん剤の投与をやめてほしいかと思うとそうではなかった」という描写。自分もまったく同じ感覚だった。入れて苦しむ分、体からはがん細胞が消えていっているはずだ、という考え。
- 「助からない」のではなくて「普通に治る」「それが当たり前」という気持ちでずっといること。
- 先があるからこそ、やるべきことをちゃんとやる。勉強も、生活も。
***
今は地固め療法を終えることがゴール。
そのゴールにたどり着いたときに、次はどういう風景が見えるのかはまだわからない。
- 作者: 松永正訓
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/11/22
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