息子が首の違和感を伝えてきてから検査入院、診断にいたるまでの経緯は「悪性リンパ腫と診断されるまでの2週間」のエントリで簡単な記録を残したけれども、こちらではその診断を受けてから本格的な治療を始め、周辺環境を一通り整えるまでにやったことを記録しておきたいと思います。
大きくは以下のようなくくりで整理したり準備したりしていました。
- 病気への正しい理解
- 制度の活用
- 身の回りの準備
- 環境支援
- 関係者への連絡・説明
- その他
1. 病気への正しい理解
悪性リンパ腫でなければ良いと強く願っていたものの、結果は悪性リンパ腫。
結果が出てしまった以上はそれに目を背けていてもしかたがないので、今後病気を治していく上でも素人なりに正しい知識を身につけることが大事と思いました。
確定診断・病気への正しい理解
医師からは、悪性リンパ腫の多くある型のうち「Tリンパ芽球性リンパ腫」という病気であることを告げられました。
さっそくネットで調べると、色々でてくる……
ちなみに私はインターネットに関連する仕事をしているので、検索で出てくる情報は玉石混交であることを十分承知しているつもりです。なので、正確な情報を得たいときは、専門機関や学術関連などの客観的データに基づく情報を掲載しているところを優先的に確認するようにしています。
これについては以下で別途まとめています。
ちなみにこの定義でいくと、このブログも玉石混交の「石」のほうなので、これを目にされた方もあくまで参考程度でお願いします(笑)。
治療方針に関する正しい理解
医師からは治療に関する方針と予定が示されました。
それをちゃんと理解しておかないと、日々変わるであろう状況に一喜一憂してしまうことが明白なので、きっちり理解するようにしました。その詳細は以下に記録しています。
直近行うべきこと(治療観点)への正しい理解
こちらは上記と重複しますが、直近の治療で使用する薬品の作用、副作用や、治療生活を送る上での注意点を可能な限り理解するように努めました。
本人への説明
本人も含め、娘(妹)に対して説明すべきかどうかという点は、最初にどうしようかと悩んだところ。
過去の自分がそうだったが、がん=死ぬ病気というイメージが強いので、伝えることでどのような精神状態に陥るのかがまったく想像できなかった。
一般的にはどうするのが適切か? という問いに、医師からは「年齢的にも理解できる年齢であるし、病気を治す上で病気のことを知っておくことは重要。大人と違って死に対するイメージが薄いのもこの年代の特徴でもあり、そもそも小児のがんは治りやすい病気でもある」というアドバイスをうけ、しっかりと説明することに。
結果、少なくとも悪い方向には進んでないので、正解だったんだろうなと思っています。
2. 制度の活用
(参考)今回我々が受けた支援制度の詳細は以下でもまとめてあります。
ソーシャルワーカーさんからの説明を受ける
受けられる制度はいろいろあります。
我々が知らなかった支援制度(医療費の助成や学校教育に関することなど)全般にわたって、わかりやすく説明していただきました。
もちろん自分で調べるのもよいのですが、ここはすぐにソーシャルワーカーさんに相談して説明を受けるのが最善だと思います。
必要かつ受けられる支援については全て教えてもらえますし、通常で得ることが難しい救済的な措置(このあと書く小児慢性疾病助成制度の事前申請はそういったものと捉えています)の段取りについても教えてくれました。
小児慢性疾病助成制度の申請
長期にわたる入院が必要とわかった時点で真っ先に頭に浮かんだのは、お金の心配でした。
が、この小児慢性疾病助成制度があるということをソーシャルワーカーさんに聞き、これで子どものことに集中できると安堵した記憶が鮮明に残っています。
こちらは申請時に正確な病名の記載が必要なのですが、検査入院時に悪性リンパ腫の「可能性が高い」とわかった時点で申請できることを教えてもらいそのようにしたところ、その申請受付後にかかる医療費は全て助成の対象になるということで大変に助かりました。
お金のことなんて子どもの心配の二の次と言われそうですが、そもそもお金が尽きればなにもできないわけで。お金のことをクリアにしておくことは大切です。
ちなみにこれを書いている時点では「申請中」の状況です。
特別児童扶養手当の申請
こちらは住んでいる自治体によって支援の内容が若干異なるようですが、申請書類を添えて申し込みその後認定されると、月額数万円の手当が受けられるというもの。
入院が長引くと交通費等々かさみがちになりますが、そういったところに充当できるようになるのでかなり助かります。
が、それら日々必要なお金は通常の家計の中から捻出するようにして、本人のこれからの生活のために貯蓄しておこうと考えています。
これを書いている時点では「申請中」の状況です。
難病見舞金の手続き
こちらも住んでいる自治体によって異なるようですが、私が住んでいるところでは小児慢性疾病助成の認定を受けると、年額で2万円が本人に対して支払われるという制度でした。
特別児童扶養手当の申請で役所に行った際に、窓口の人にこういう制度もあるので申請できますよ、と伝えられました。
現時点では小児慢性疾病助成の認定が下りていないので「未申請」となっています。
高額医療関連手続き
こちらは小児慢性疾病助成制度によって医療費の大部分がまかなえる「以前」にかかる医療費に対する軽減制度ですが、私達の場合は手持でまかなえたので利用はしませんでした。
利用をする場合は、加入している健保に早めに手続きをすると恩恵が早めに受けられます。
加入している生命保険の申請
息子が加入していた保険の場合、「がん診断」「手術(中心静脈カテーテルを入れたので)」と「入院」に対して補償されます。
入院に関しては現在も治療中のため、検査入院に対しての請求となりました。
こちらも入金されたら本人の口座にそのまま入れておこうと思っています。
学校の転出入
入院が長期にわたるため、当然これまで通っていた中学校には行けなくなります。
学力低下の問題もありますが、在籍をそのままにしてしまうと入院期間中は全て欠席扱いになってしまうというのがつらいところ。
もちろん義務教育なので進級できない、卒業できないということはないものの、学力の問題とあわせて子どもの不利益になり得るものは可能な限り除きたいというなかでの選択肢が、近隣の特別支援学校へ転入して訪問指導をうけるというものでした。
こちらに関しては、以下のエントリで別にまとめています。
3. 身の回りの準備
治療中に必要なものリストを確認して準備
本格的な入院の前にすでに検査入院をしていたので、だいたいのものはそのまま持ち込むかたちになりました。
ざっと書き出すと以下のようなものたち。
あまり規則が厳しすぎない病院なので、常識的な範囲内での持ち込みを行っています。
衛生観点で歯磨きのいいやつを買う
抗がん剤投与による副作用で免疫力が下がるというのは有名な話で医師からも説明されましたが、意外だったのが、飛沫感染などよりも自分自身が持っている菌などのほうがタチが悪いという話。
なので、トイレのあとウォシュレットでしっかり洗う、手もしっかり洗って備え付けのアルコールジェルで消毒する、歯磨きもちゃんとするといった基本的なことがとても大事になるということでした。
もともとそのあたりがかなりガサツな息子用に、歯磨きに関しては電動のかなりいいやつを買いました。
手磨きよりも汚れが落ちるし、すこしでもよい口内環境を作ることができるならばトータルでは安い買い物だとちょっと奮発。
4. 環境支援
塾の退会
学校と同様に通うことができなくなってしまったため、こちらは速やかに退会手続き。
習い事の休止
これも同様。
が、退院してまた再開できるようになったらまたやりたいという本人の意志もあり、休会扱いにしてもらう。
学習環境の構築(訪問学級用)
こちらの手続きに関しては「2. 制度の活用」で書きました。
利用する教材に関しては、前在籍校の教科書をそのまま使ってやるということで特に準備することはありませんでした。
学習環境の構築(通信学習)
以下のエントリでも書きましたが、訪問学級による授業を受けられるとはいえ、英国数の3教科を週に2時間ずつ、という限られた内容。普通にやっていたら将来の復学に影響がでることは必至。
そのため、インターネットでいくつかの通信教育を調べて活用することにしました。
これに関してはそのうちまとめておこうと思います。
病室でのインターネット回線確保
通信教育を利用するといっても、病室には自由に使えるインターネット回線はないため、基本的には携帯事業者のモバイル回線を使用するしかないというのが実情。
一方で、普段のコミュニケーション(LINEなど)や暇つぶしのゲームでも通信はしますし、そのうえ通信教育で動画など見ようものなら、あっというまにデータ通信料の上限に来てしまいます。
ということで、使っていなかったSIMフリースマートフォンをルーター替わりにして、格安SIM(いわゆるMVNO)で通信環境を整えました。
車の手配
これは私の住んでいる地域や状況によるところが多いですが、
- うちから入院している病院は車でないと行きにくい場所にある
- 娘の習い事等の送り迎えに、車が必要。息子にかかりっきりで娘が犠牲になることは避けたい
- 一方で、うちには車が1台しかない
という問題を解決するために、懇意にしている営業さんに協力してもらい、車を1台調達してもらいました。
5. 関係者への連絡・説明
家族への説明
「本人への説明」で記載したことと重複
親戚への説明
近い親戚には、ひととおり説明。
中学校の先生への説明
検査入院の時点で、担任には悪性の可能性もあるということは伝えていたので、確定診断が出た時点でも正確な情報は伝えておきました。
一方、事情を伝えていないクラスメイトから本格的にどうなっているのか心配されているということもあり、長期入院が必要であるということは伝えてもらいました。
一方で以下については校長と担任との協議で、伏せておくことに。
- 病名
- 治療終了後は元の学校にもどるものの、一時的に特別支援学校へ転入(もとの学校からは転出)という事実
校長はじめ学校の先生のご配慮もあって机等はそのままおいていただき、普通に在籍しているというかたちにしていただけたので、復学に際しての心配ごとは、いまのところは最小にとどまっている状態。
小学校の先生への説明
本人が6年生時の担任が妹の今の担任でもあるということで、どちらかというと妹へのサポートという観点で小学校の先生にも報告をしておくことに。
これを書いている時点ではまだ説明しておらず。
他縁故への説明
ほか、親しい人には一応連絡。
6. その他
精子凍結保存
実はこれが一番難しかったこと。
悪性リンパ腫(Tリンパ芽球性リンパ腫)の診断がでた段階で、可能であればすぐに治療に入りたいという意向がある一方で、治療によって精巣がダメージをうけ、将来子どもをもつことが難しくなるかもしれないという懸念を医師から告げられる。
もし望むのであれば精子凍結保存の手法は確立されているので、検討してくださいとアドバイスを受けました。
年齢的に微妙かつデリケートなテーマ(倫理的な問題も)であるため時間的猶予がないなかでもやはり悩みましたが、将来の選択肢を増やすという観点で、凍結保存を行うことに。
医師が言うには、病気が進行していてそんなこと言っている余裕がない、すぐに治療する必要があるという場合は問答無用になってしまうが、今回の場合は多少の時間的があるので提案ができた、ということでした。
結果、これもよかったんじゃないかな。
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こんな感じで1-2週間の間にやるべきことは満載でしたが、それもこれも患者である息子のためであるので、ちょっとした高揚感の中、スピーディに終えることができました。
なにかの参考になれば。